一つ目の専門は、地理学を選択

中学校の頃からの将来の夢は、日本語教師。大学受験の際、日本語教師になるのであれば、日本語教育を専門にすることよりも、世界を広く知ることがむしろ大事ではないかと思い、主専攻で地理学、副専攻で日本語教育が学べる大学を運よく見つけ、進学しました。

大学では、日本語教師になることを目指して勉学に勤しみましたが、日本語教師になるには社会人経験や大学院で学ぶことが必要だと、大学の先生方からご助言をいただきました。そこで、大学卒業時にはまず民間企業に就職し社会人経験を積むことに。社会人3年目の1999年4月、夢だった日本語教師への転職が叶いました。

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一度目の社会人大学院生として、 二つ目の専門（日本語教育）を修める

日本語教師の仕事をするなかで、授業を担当していた留学生からの「強烈な問い」をきっかけに、研究したいテーマが明確になるという経験をしました。その体験から約半年後の2001年4月、日本語教師3年目にして仕事をしながら大学院博士前期課程に進学。修士論文のテーマは「日本人日本語教師と日本語学習者の関係性」。在学中に教職課程を履修し、中学社会科、高等学校地理歴史、高等学校公民の教員免許を取得しました。

日本語教師の仕事と大学院で、中国、台湾、韓国など東アジア諸国の留学生たちと多く関わるなかで、歴史認識の違いを突き付けられる機会がたくさんありました。この歴史認識の違いは、お互いに違いを知る機会がないこと・学校教育で教えないことが原因ではないかと思ったのです。次第に、日本語教師を続けるよりも日本の中高生に歴史認識の違いを伝えたいという思いが強くなっていきました。その折、幸運にも私立中高の採用試験に合格し、2003年4月、私立中高の社会科地歴公民科専任教諭に転職しました。

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想定外だった
二度目の社会人大学院生になる

中高の教員となり、最初の3年間は中学校の所属でした。社会科の授業では、中国、台湾、韓国など東アジア諸国の地理や歴史を扱う機会が多くありました。教員になった大きな目的である、歴史認識の違いについて生徒たちと共に考えたいという思いから、中国や韓国の歴史教科書（日本語訳）と日本の教科書を比較して議論する授業などを行っていました。

2010年頃、勤務校が百周年を迎えるにあたり、学園の教育を見直す動きがありました。そこで、自分の担当科目である社会科、特に地理教育の歴史を紐解いてみたいと考え、開校以来の勤務校の地理教育が、学園の教育理念に則っていかに継承されたかを調べることにしたのです（➝業績：拙稿「成城学園における自学自習―中学校高等学校の地理教育を事例に―」参照）。勤務校に開校当初から戦後直後まで地理教師をしていた仲原善忠について調べる中で、戦後の沖縄には、沖縄独自の「社会科教科書」が存在したこと（後にそれが社会科副読本と判明）、沖縄には社会科の設置が想定されていなかったことを知ったのです。この事実を大学院時代の教職課程の先生にご相談したところ、だれもやっていないからぜひ研究するよう強く薦められました。そして、教員11年目の2013年4月、専任教諭をしながら大学院博士後期課程へ進学しました。

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三つの専門を修めた結果
たどり着いた

博士後期課程3年次までは、中高の教員と二足の草鞋でした。正確には、幼児の育児もしていたので、三足の草鞋かもしれません。当時中堅教員で多忙を極めていたので、論文や文献を読んだり論文の下書きをするのは、主に通勤中でした。

2016年3月に中高の教員を辞し、4月からいくつかの大学で非常勤講師や研究所で史料整理の業務等をしながら、「占占領下沖縄における社会科成立史研究」というテーマで博士論文を執筆しました。この成果は、『占領下沖縄の学校教育』という本にまとめました（業績『占領下沖縄の学校教育』参照）。

2019年3月、無事博士の学位を授与され、博士後期課程を修了。その後、1年間のポストドクターを経て、2020年4月、聖徳大学大学院教職研究科に准教授として着任しました。現在、大学教員として、小学校・中学校・高等学校の教員養成と幼稚園・小学校の現職教員の再教育に携わっています。

第四章の詳細を読む ルーツ-Voicyでの対談