2022.11.30

なぜ、沖縄戦の最中からいち早く学校が再開したか

はじめに

 1945年4月1日、米軍が沖縄島に上陸開始と同時に米国海軍政府が樹立され、沖縄は米軍の統治下におかれました。

 戦闘開始から1週間もたたない4月6日、占領下初の学校である高江洲初等学校(現、高江洲小学校)が開校しました。米軍は、沖縄戦の最中にもかかわらず、可能なところからいち早く学校を再開させていました。私が行った調査結果では、組織的な戦闘が激しかった6月までに、沖縄群島で10校の開校が確認されています。なお、沖縄戦があった1945年度中に、小学校に相当する学校が延べ132校、高等学校に相当する学校が延べ23校開校しました(拙著『占領下沖縄の学校教育』六花出版、2021年、83頁参照)。

 なぜ、こんなにも早く学校が再開したのでしょうか。米軍側の事情と沖縄側の事情があるので、それぞれの立場から見ていきたいと思います。

米軍の事情

 第一に、沖縄戦の開始以前の時点で、状況が許す限り教育を早急に再開する方針を定めていたことが挙げられます。1945年1月6日に出された「作戦司令第7号」の「6.政府情報 c.情報」に、次のように示されました。

 緊急の教育・娯楽計画は実施してもよい。より公式で恒久的な教育は状況の許す限り早急に開始する。

「第10軍司令官の軍政(GOPER)に対する作戦司令第7号」1945年1月6日(財団法人沖縄県文化振興会文書管理部史料編集室編『沖縄県史』資料14 琉球列島の軍政➀945-1950 現代2(和訳編)、2002年所収、197-207頁。

 第二に、米軍が戦闘作戦を行うにあたり、子どもたちの管理や保護に苦慮したことが挙げられます。そこで、「娯楽施設=運動場」を確保することが有効だと考え、住民を収容していた収容所内やその近くに学校を再開していったのです。

「整列している地元学校の児童」(1945.5)(沖縄県公文書館所蔵)

沖縄住民側の事情

 学校の再開は、沖縄の住民たちも強く望んだことでした。それは、子どもたちが、ゴミ捨て場にたかって物を漁っている姿や、群れをなしてうろうろとしている状況を見て、沖縄の住民たちが何とかしなければならないと思ったからと言われています。

 ひめゆり学徒隊として戦地に赴き、終戦直後の沖縄教育の立ち上げに尽力した仲宗根政善(琉球大学名誉教授、1907-1995)は、当時の状況を次のように回想しています。

 一番ショックだったのは、チリ捨て場にたかっている学童の群れを見たときでした。(中略)”戦果”をあさっているんですね。みんなわれわれ国民学校の学童たちです。それを見たとき、これは放っておけないなあと思いました。名護へ行ってもそういう状態でした。あちらこちらに子供らの群れがうろついていました。

新崎盛暉編『沖縄現代史への証言』下、沖縄タイムス社、1982年所収、182頁。

 

再開した学校で、まずやったこと

 学校を再開することにしたものの、校舎はもちろん、机、椅子、黒板、教科書といった最低限の設備や教具もありませんでした。学校の場所が「広場」「砂浜」「岩陰」などということも多く、いわゆる青空教室で再開しました。

 

 戦争の混乱や避難生活のなか、子どもたちは人間らしい生活ができない状況にありました。体や服も大変汚れた状態だったのです。そこで、学校では生活指導のなかでも、体の清潔を保つことから始めなければなりませんでした。

 例えば、教師たちが米軍に石鹼の配給をお願いし、彼らの体を洗うことから始めたという地域もありました。学校が再開して最初の1週間は、水浴びをして終わったというところもあったほどです。

 最初はないものづくしでしたが、教員と保護者らが力を合わせ、手作りで机、椅子、黒板、藁ぶきの校舎、そして運動場などをつくっていき、次第に学校らしくなっていきました。校舎は、米軍の払い下げの天幕(テント)やコンセットが配給され、それを使うようになっていったのです。

沖縄文教学校の風景(1945年12月)。左奥がテント、右側の丸い屋根の建物がコンセット(沖縄県公文書館所蔵)

いち早く学校を再開した意義

 以上、沖縄戦の真っ最中から学校が再開した理由について見てみました。米軍側の理由は、戦闘を遂行するための「隔離」、沖縄住民側の理由は、子どもたちの日常を少しでも取り戻すことでした。

 学校を早く再開し、子どもたちが生活や学びを少しずつ取り戻すなかで、元の土地は荒廃して戻れなかったとしても、学校を拠点にかつての地域(字)の結びつきを取り戻したり、復興の様子がみられるようになります。学校を足がかりにしたことで、小さな地域の単位から復興が始まり、広がっていったことに意義があったのではないでしょうか。沖縄戦からの復興において、学校は欠かせない存在だったと言えるでしょう。

Contactご依頼 お問い合わせ

取材・講演・執筆などのご依頼や詳細に関しては、
こちらよりお問い合わせください