2022.11.22

Root第四章:中高教員から研究者へのライフシフト

中高教員・育児をしながら通った博士後期課程

 

 中高の専任教員をしながら大学院・博士後期課程(以下、博士課程)を受験し、2013年4月に社会人2度目の大学院生となりました。


 前半の3年間は、週6日教員として勤務しながら、後半の3年間は、大学での非常勤講師や研究所の臨時職員等をしながら、大学院に通い、博士論文を書き上げました。保育園から小学生にかけての子どもの子育てと、思春期真っ只中の中学生の担任のしながら学業に励むのは、並大抵ではありませんでした。

 博士課程入学時は、大好きな教員を辞めてまで研究者になろうとは全く思っていませんでした。

しかし、研究をすればするほど真実を知りたくなり、自分の手で何としてでも解明したいという思いが募っていき、しだいに研究者という立場になることを強く望むようになっていきました。

大好きな教員の仕事を辞し、研究の道へ進むことを決意

 博士課程の3年生を終えるタイミングで、大好きだった中高の専任教員を辞め、大学の非常勤講師等をしながら自分の研究を進める道を選択しました。その決断ができたのは、指導教授の先生が背中を押してくださったからです。

 博士課程の2年生の夏、指導教授の先生から、1年半後(2016年4月~)大学非常勤講師の仕事をしてほしいというお話がありました。教員の仕事をしながらでもできるので、ぜひ検討してほしいとのことでした。

 当時、中堅教員としてそれなりの責任を持って仕事をする立場でした。博士課程での学びと育児で、すでにキャパシティーを完全にオーバーしている状態で、ほんの少しでも負担を増やすことができない状態でした。また、概ね博士論文を提出できる研究業績も満たしていたこともあり、先生が研究の道に進む背中を押してくださったのだととらえました。たくさん悩みましたが、大学非常勤講師の仕事が始まる直前の2016年3月末で中高教員を辞すことにしました。

教員を辞してから3年かけて博士号を取得

 大学非常勤講師や研究関係の仕事をしながら博士課程で学ぶ日々。完全に研究にどっぷりというわけにはいきませんでしたが、今までずっと仕事の隙間時間でしか研究ができなかったのを、週のうち1、2日を研究に充てることができたのはとても幸せでした。

 

 博士課程では、指導教授の先生の方針にしたがい、妥協せずでも欲張りすぎず、史料を収集し丁寧に調べ、分析し、文章にしていきます。この地道な作業は、まさに自分との対話。博士論文を書いている方から、書くことが「辛い」という言葉が聞かれますが、私の場合は楽しくて楽しくて仕方がなかったです。なぜなら、博士課程に在学した6年間もの間、じっくり自分と向き合えた贅沢な時間だったからです。勢い余って、約50万字の論文を書いてしまったくらいです。

 

 結果的に、教員を辞して3年後の2019年3月に博士課程を修了しました。博士号を取得するということは、一つの学説を世に生み出したということ。修了式では、責任もって新たな学説を世に伝え、新たな事実を解明し続けることを誓いますと、決意を新たにしました。

研究者として生きるための模索

 研究者として、安定して研究活動を職業として続けていくには、大学の専任教職員になるのが最も一般的な方法です。しかしながら、公募だと数百倍の倍率にもなる超難関。18歳人口の減少もあり、ただでさえ難しいのに、そのポストは減少傾向にあります。

 そのため、大学の専任教職員には必要な学問を修めるだけではなることができません。非常勤講師など大学教員としての経験を積みながら、少ない収入や研究費を何とかやりくりして研究を行い、研究業績、つまり論文や著書を出していかなければなりません。

 ですが、それを地道に一生懸命やっていても、だれもが大学の専任のポストに就くことができるわけでないのです。むしろ、なれる人の方が少ない厳しい世界です。

 私も例外にもれず、大学で非常勤講師等の仕事をしながら大学での教育経験と研究業績を積みました。

 その一方で、大学に就職せずとも、研究者として活躍できる方法もあるのではないかと思い、個人事業主(フリーランス)になり、自分を実験台にして、専門知識や経験をどのように仕事に結びつけられるか実験してきました。

 やってみて分かったのは、専門知識を専門家ではない相手に分かるように伝えることが、いかに難しいかということです。

 

 曲がりなりにも「研究を仕事」にするための実験をしてみて、相手がわからない・知らないのが問題なのではなく、分かってもらえるような工夫をすることがいかに大切かを学びました。

 もちろん、全然仕事にならなかったり、分かってもらえなかったりして、どうしてなんだろう?と悩むことも多かったですが、この経験は、フリーランスだろうと組織にいようと関係ないと思っています。

非常勤講師、フリーランスを経て大学教員へ

 中高教員を辞してから4年後の2020年4月、縁あって大学教員として着任する運びとなりました。大学専任教員になるには、いくら研究が評価されようとも、採用試験を受けても倍率が100倍を超えることがザラで、何年も、場合によっては何十年もチャンスをうかがっても叶わないことがある世界。本当に幸運なことだと、ありがたくもったいなく感じています。

 2022年現在、大学専任教員として3年目を迎えました。まだまだ不慣れなことが多く、未熟でありますが、一研究者として研究に真摯に取り組み、社会状況を少しでも改善するための研究知見を提供し、それを伝える役割を担っていきたいと思っています。

 

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